日本フィル・第301回横浜定期演奏会

2週連続で台風が通過した首都圏、昨日は久し振りに穏やかな土曜日、横浜みなとみらいホールで日フィルの横浜定期を聴いてきました。
前回で記念の300回を迎えた横浜、台風の後もラザレフ台風の上陸と言った所でした。東京では「ロシアの魂」を熱演中のマエストロ、横浜ではチョッと傾向の変わったプログラムを紹介してくれます。今回は以下のドイツ物。

リスト/交響詩「タッソ、悲哀と勝利」
ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
~休憩~
R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラかく語りき」
指揮/アレクサンドル・ラザレフ
ヴァイオリン/佐藤俊介
チェロ/山崎伸子
コンサートマスター/扇谷泰朋
フォアシュピーラー/千葉清加
ソロ・チェロ/菊地知也

カトリック系とプロテスタント系が混在する、如何にも非ドイツ人によるドイツ・プロという点が面白い曲目ですが、横浜の会員にはやや渋すぎたかも。ツァラの冒頭以外は初めて聴いたという聴き手も少なくなかったようでした。

冒頭のリスト、前奏曲に次いで取り上げられる機会が多い交響詩ですが、実はナマでは滅多に演奏されません。私もナマ演奏の記憶は定かではありませんが、中学時代にはシルヴェストリ盤で良く聴いていた作品。久し振りに耳にして懐かしく感じました。
ゲーテの生誕100年祭、正に誕生日の8月28日に初演された作品で、今回演奏されたのは後に改訂された最終稿。バス・クラリネットが登場し、表題の様に悲哀と勝利がハッキリ聴き取れる聴き易い構成。
ちょっと耳には難解とも感じられますが、ラザレフの手に掛かると最初から最後まで面白く聴けるから不思議。聴き慣れない曲を一気に聴かせる所がラザレフの真骨頂でもあります。

前半はプロテスタント、ブラームスの渋ぅ~いドッペル・コンチェルト。チェロの二人も私は久し振りにナマで聴くソリストたちで、特に山崎氏は客席で拝見することが多くなりました。
指揮台がラザレフということで些かの弛緩する個所も無く、心地良い緊張感で3人の呼吸を楽しみました。
最後のシュトラウス、もちろん生誕150年記念という意味合いもあるのでしょうが、ラザレフとしては腰を痛めてキャンセルした回の雪辱戦でもあります。マエストロのツァラは以前に読響でも聴いていますから、初めてじゃありません。

相変わらずアグレッシヴな棒、速目のテンポで一気に描き上げます。何しろ体感時間が極めて短い。オルガンの超低音で始まったと思ったら、あっという間に低音ロ短調のピチカートで終わってしまう。それだけ集中力が強かったということでもありますが、いくつもある難所を危なげ無く通過してしまう日本フィルの合奏力も大したもの。
ツァラと言えば中程に登場するトランペットの高音を冷や冷やしながら聴いたものですが(初めて聴いたロイブナー/N響は酷いものでした)、名手オットーの力量もあって、まるで古典派の交響曲をサラッと吹いているような印象すらありました。

今回の3曲、どれも退屈する個所は一箇所たりともありませんでしたが、終わって見れば休憩を入れて丁度2時間。私には20分位にしか感じられませんでした。時間も押していましたし、最後がツァラということもあってアンコールは無し。
寒気が流れ込んでメッキリ涼しくなった横浜、その夜景も一層冴え渡る一夜でした。

 

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